14日に日本に戻り、早10日近くが経過しました。ロンドンでは考えられないような殺人的スケジュールが毎日組まれていて、西へ東へ目まぐるしく移動しています。日本企業に対して欧州の経済状況、プライマリーマーケット動向、投資家トレンド等を案内する趣旨で、2週間でミーティングが40以上。加えて夜は接待や社内飲み会がびっしり詰まっているので、さすがに疲労困憊です。また、日本食が美味しく、アルコール漬けになっているせいか、体重が10日間で3kg増えてしまいました。せっかくロンドンで健康的な生活を送っていたのに・・・。
それはさておき、渡英してまだたった4ヶ月だろうというご指摘もあろうかと思いますが、今回戻って来て、日本の快適さに感激しっ放しです。もちろん僕が日本人だということがそのように感じる最大の理由であることは間違いありませんが、日本では、広く一般に提供されるサービスの質が極めて心地良く感じられるためです。公共交通機関の正確性、レストランの接客態度、メーカーのカスタマーサービスセンターの対応速度等々、イギリスと比較して良いものを挙げればきりがありません。ただ何が最も素晴らしいかというと、これら上質なサービスが、一般料金に対して追加料金を支払わずとも受けられるということに尽きます。イギリスでも良いサービスが受けられないということはありません。ただし、全て有料なのです。いわゆる「通常」料金の倍以上を出せば上質なサービスをセレクティブな印象をもって受けることができますが、そうでない限り、日本同等のサービスは決して期待できません。というよりも、そもそもサービスの受け手側もそれだけを対価として支払っていないことを自身で認識しているので、到底上質なものを期待値として持っていないのです。これはまさに国民性の違いによるものだろうと考えています。日本ほど無償でのサービスが社会的に評価され、美徳とされる国は少ないのではないでしょうか。良い悪いかの議論はここでは置いておいて、サービス残業しかり、電車が事故等で一時不通になった場合直ちに代替運行バスを走らせるのしかり、レストランでお茶やおしぼりが無料でだされるのしかり、です。金銭的な見返りが直ちにあるわけでもないのに「おもてなし」の心でベターなサービスを提供する。そんなホスピタリティに触れては、日本をますます好きになっていっています。実はこういったサービスを全て有償にすれば日本のGDPはかなり嵩上げされるのではないでしょうか。(もちろん、通常料金以上のサービスを通常日本では受けられているという前提に立っています。)
ところで、外務省の広報広告によれば、日本は「世界好感度ランキング3年連続第一位」だそうです。英国BBCワールド・サービスが2007年から2008年にかけて実施した国際世論調査(BBCワールド・サービス、GlobeScan Incorporated社、米メリーランド大学研究チーム(PIPA)が共同で、34カ国の人々に、世界の14の国や地域(日本、ドイツ、EU、フランス、英国、ブラジル、中国、インド、ロシア、米国、北朝鮮、パキスタン、イスラエル、イラン)が世界に与える影響をどう見ているかを聞いたもの)で、世界に与える影響が肯定的だという声を最も多く集めたようです。対象国、地域の選定があまりにも恣意的であることは否めませんが、日本人にとっては嬉しい結果ではあります。
再渡英まで残り10日間、日本を満喫したいと思います。
サービス・ホスピタリティーという点で、最近私自身、仕事柄気になっていたので、コメントさせていただきます。
安さが売りの、ロー・コスト・キャリアと呼ばれる航空会社。
欧米・一部アジアでは主流となってきているようですが、日本にもいよいよ進出してきています。
シブヤさんもEasyjetなどをご利用のようなので、よくご存知かと思いますが・・・・。
無駄を徹底的に排除することで、運賃を安くしている。こういった会社では、「サービスは不要」と考えているようで、機内食・アメニティ・機内エンターテイメントなどは、追加料金を払えば貰えるといったもの。
確かに合理的だし、安いんだからそれでいいやって思うのですが、こういうの、今まで、当たり前のようにサービスを受けてきていた日本人にも受け入れられるのかなあ・・って思うんです。
シブヤさんのこの日記を拝見して、イギリスに限らず、普段から「追加料金を払えば、上質なサービスが受けられる」と考える国の人ならば抵抗ないでしょうが、日本人ってそこまで割り切れているのかな?と、考えさせられる今日この頃・・・
こういった会社がこれから増えてくれば、サービスに対する考え方も変わってくるのでしょうが、まだまだ日本では、サービスする側もされる側も戸惑いを感じているように思います。
投稿情報: パッキー | 2008-12-28 02:18
帰国してから元気にしているかと多少心配していましたが、日記を読んで、一安心。
日本のサービスは確かに文化が違うね。
サービス従事者としては、相手とする顧客のお国柄の違いに、いい加減慣れたとはいえ、難しさも感じます。無償サービス/平等な、上質サービスに慣れて、期待値が上がりすぎるというマイナス面も否めない。
しかし、渋谷くんのおっしゃる通り、良い悪いは抜きにしても、やっぱり、雨の日の百貨店ビニール袋サービスとか、お茶屋さんでお茶葉を買うだけで出していただける温かいお茶のサービスなど、痒いところに手が届くおもてなしの心は、日本人の誇りよね。
投稿情報: noriko | 2008-12-28 10:20
A Happy New Year!!
挨拶が遅くなり失礼しました。
日本での滞在はアルコール漬けといううわさを聞いて心配しています。無茶はなさらんように。。
BtoBの仕事でもサービスに対する考え方に割り切り的な要素を入れようとしている弊社もいたりと。。。既存のサービスを(極論してしまうと)"過剰サービス"と位置づけて、(1)削る、(2)根本的になくす、(3)加える、(4)新しく付加するの4つのオプションをつけて価格をセットするとかもやっています。
仕事だからフルパワーで理解して、導入するべきなんだろうけど、↑のNorikoさんのコメントの通り、カンペキに割り切れない僕も居るのが事実です。。
今年もどうぞよろしゅうに。。
投稿情報: buchi-tk | 2009-01-04 12:49
>パッキーさん
コメントありがとうございます。
恐らく日本人には、今まで無料で受けられていたサービスが有料になることについては相当抵抗感があるのじゃないかなと、例えば今まで100円していたものが80円になり、今まで通りのサービスを受けたければ20円追加料金をお支払い下さいということになっても、サービスが悪いと思うのではないでしょうか。
航空サービスについては、友人が面白い日記を書いていました。
http://americafe.blog.drecom.jp/
安いエアラインを使っているくせに、やはり有料であれば不満に持っているようです。
投稿情報: Shibuya | 2009-01-05 09:28
>noriko
おお、連絡せずに申し訳ない。
プライベートは実質12月31日~1月3日の4日間しかありませんでした。
3週間もいたはずなのに・・・。
そう、無償でサービスを提供することは美しい、人により喜んでもらえることをするのは素晴らしいという雰囲気を社会全体で生み出してしかるべきであると僕は思っていて、その点からも全て合理的に金銭的対価とマッチさせることには反対なのです。
ビジネスマン、特にバンカーとしては失格かな。
投稿情報: Shibuya | 2009-01-05 09:33
>buchi-tk
こちらこそ、明けましておめでとう。
今年もよろしくね!
やっぱりbuchi-tkのような外資系企業だと当然合理的に切り分けるんだろうなあ。
でも他に人に対するコメントの繰り返しのようになるけれど、合理的が何かとは理解しつつも、無償でサービスを提供することが僕は美徳だと思う。
投稿情報: Shibuya | 2009-01-05 09:37
明けましておめでとうございます。サービスに関して、激しく同意致します。飲食店で強要されるサービス代が最も憎ましい。なぜ日本より遥かに劣悪なサービスに対してチップを置かねばならないのだ、といつも思いますね。
皆が総じて得られる(ように見える)快適なサービスと生活がなくなった場合、日本の薄給研究者・技術者のレベルはガタ落ちしそうですね。日本の超高水準QOLは、ねじれを優しく覆ってくれていると思います。合理は合理を、非合理は非合理を・・・
投稿情報: Sadao | 2009-01-13 08:40
>Sadao
新年明けましておめでとう。
米国に住んでいる君に同意してもらえると、とても嬉しいです。
確かにチップはつらいわな・・・。
ロンドンはチップを支払うことは少ない代わりに、中級以上のレストランだとまず12.5%程度のサービス料が自動的にチャージされます。
なぜこのサービスにサービス料?、と憤慨することが少なくありません。
合理性の議論って、もちろん全ての議論について同様だけれど、前提条件を何に置くかによって結論の導き方が変わるので、その点において、いわゆる外資系コンサルティングファームや投資銀行のアドバイス通りに物事を進めるのは全くナンセンスだと思うことが最近多いです。
投稿情報: Shibuya | 2009-01-13 16:23